空き家の問題が全国で深刻になっています。2023年の調査では、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高に。高齢化や人口減少が背景にあり、「実家をどう片付けようか…」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そんなときに知っておきたいのが、自治体による家財道具処分費の補助制度です。この記事では、制度の概要から申請方法、注意点までをわかりやすく解説します。
全国の自治体では、空き家に残された家財道具の処分費用を補助する制度が導入されています。これらの制度は、空き家の有効活用や地域の活性化を目的としており、自治体ごとに条件や補助内容が異なります。
空き家家財処分費補助制度は、空き家に残された家具や家電などの家財道具を処分する際、その費用の一部を自治体が補助する制度です。これにより、空き家の所有者や新たな入居者の負担を軽減し、空き家の流通促進や地域の定住促進を図っています。
制度の背景:なぜ補助が必要?

空き家に残された家具や家電を片付けるのは、実はかなり大変。専門業者に頼むと、17万~50万円ほどの費用がかかることもあります。費用の負担がネックとなり、空き家が放置されるケースも少なくありません。
こうした事態を避けるため、多くの自治体が「空き家整理の費用を一部補助する制度」を整えています。これは、空き家の有効活用と所有者の負担軽減を目的としています。
全国の家財処分費補助制度の概要
全国の市町村(1,741自治体)のうち、家財道具等の処分費用に対する補助制度を実施している自治体は以下の通りです:
- 北海道:179市町村中10自治体(約5.6%)
- 青森県:40市町村中8自治体(20.0%)
- 岩手県:33市町村中6自治体(18.2%)
- 宮城県:35市町村中6自治体(17.1%)
- 秋田県:25市町村中4自治体(16.0%)
- 山形県:35市町村中14自治体(40.0%)
- 福島県:59市町村中10自治体(16.9%)
これらのデータは、各自治体の補助制度の実施状況を示しており、詳細は「全国の空き家に関する補助金制度の都道府県別集計」から確認できます。 全国の空き家みまわり隊
主な補助制度の内容
多くの自治体で実施されている家財処分費補助制度の一般的な内容は以下の通りです:
- 補助対象者:空き家の所有者、相続人、購入者、賃借人など。
- 補助対象経費:家財道具の搬出・処分費用、リサイクル料金、清掃費用など。
- 補助率と上限額:補助率は経費の1/2が多く、上限額は10万円程度が一般的ですが、自治体によって異なります。
例えば、岡山市では、家財等の処分及び搬出を行う場合、補助事業の経費に要する金額の2分の1を補助し、補助金の上限額は20万円です。
補助制度の一般的な条件
補助制度の内容は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような条件があります。
- 空き家バンクへの登録: 多くの自治体では、補助を受けるために空き家バンクへの登録が必要です。
- 対象者: 空き家の所有者、相続人、購入者、賃借人などが対象となる場合があります。
- 補助対象経費: 家財道具の搬出・処分費用、リサイクル料金、清掃費用などが含まれることが一般的です。
- 補助率と上限額: 補助率は経費の1/2が多く、上限額は10万円程度が一般的ですが、自治体によって異なります

対象となる空き家と申請できる人
- 対象の空き家:空き家バンクに登録された住宅、長期間使われていない一戸建てなど
- 対象の人物:
- 空き家の所有者(市税の滞納がないこと)
- 空き家の相続人
- 移住希望者(購入・賃借)
- 空き家を貸す・売る立場の所有者
補助される費用と金額の目安
補助対象となるのは、家の中にある家財道具の処分費用です。
- 引越し業者や不用品回収業者への委託費用
- 粗大ゴミなどの処理費用
※物置、庭の木、農機具、事業用機器、家電リサイクル料などは対象外となることが多いです。
自治体 | 補助率 | 上限額 |
---|---|---|
長崎市 | 50% | 10万円 |
能登町 | 50% | 10万円 |
雲仙市 | 100% | 10万円 |
常陸太田市 | 100% | 20万円 |
申請の流れと必要な書類
- 空き家バンクへの登録:対象空き家が登録されていることが前提
- 見積書の取得:事前に業者から見積もりをもらう
- 申請書の提出:申請書、見積書、納税証明書など
- 交付決定後に作業開始:決定前に着手すると対象外
- 実績報告:領収書などを添えて実績を報告
⚠ 注意点:市税の滞納があると対象外になることがあります。代理人申請には委任状が必要です。
自治体による違いと共通点
- 共通点:ほとんどの自治体で「バンク登録」+「申請→交付決定→実施→報告」が基本
- 違い:補助率(50% or 100%)、上限額(10万 or 20万)、対象者の幅など
活用事例の紹介
たとえば、実家を相続したご家族が空き家の家財処分に困っていたところ、補助制度を使って費用の約半分を負担してもらい、安心して片付けを終えた事例があります。
また、高齢者夫婦が遺品整理をしながら空き家バンクに登録、補助金を受けて専門業者に依頼し、数十万円の支出を抑えることができた例も報告されています。
各自治体の具体的な事例
以下に、いくつかの自治体で実施されている補助制度の事例を紹介します。
東京都空き家家財整理・解体促進事業
- 対象者:都内の空き家所有者
- 補助内容:空き家の家財整理または解体に係る費用の一部を補助
- 目的:空き家状態の早期解決及び空き家の利活用等を推進
- 詳細:東京都空き家家財整理・解体促進事業
大阪市空家利活用改修補助制度
- 対象者:市内にある平成12年5月31日以前に建築された住宅(戸建又は長屋建)で、3か月以上空家となっているものの所有者
- 補助内容:
- 住宅再生型:バリアフリーや省エネといった性能向上に資する改修工事費の一部を補助
- 地域まちづくり型:子ども食堂や高齢者サロンなど地域まちづくりに資する改修工事費の一部を補助
- 補助率と上限額:補助率は経費の1/2が多く、上限額は75万円程度が一般的ですが、補助内容によって異なります
- 詳細:大阪市空家利活用改修補助制度
名古屋市空き家活用支援事業費補助金
- 対象者:名古屋市内の空き家の所有者または賃借人
- 補助内容:地域の活性化を目的とした用途(滞在体験施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設、防災用倉庫、その他市長が認める用途)に使用するための改修工事費の一部を補助
- 補助率と上限額:改修工事費の3分の2(上限額100万円)
- 条件:一定の耐震性や安全性が確保され、改修後10年以上継続して活用すること
- 詳細:名古屋市空き家活用支援事業費補助金
山口市
- 対象者: 山口市空き家バンクに登録された空き家の所有者や入居者。
- 補助内容: 家財道具等の処分費用の一部を補助。
- 申請方法: 所定の申請書類を提出。詳細は山口市の公式ウェブサイトをご参照ください。
高松市
- 補助率と上限額: 処分費用の1/2、上限10万円。
- 対象経費: 家財道具の運搬・処分費用。ただし、家電リサイクル券の購入費用や自ら行う処分費用などは対象外。
萩市
- 対象者: 萩市空き家情報バンクに登録された物件の所有者や相続人など。
- 補助内容: 処分費用の1/2、上限10万円。
- 条件: 補助金交付後、空き家情報バンクに3年以上継続して登録すること。
山陽小野田市
- 対象者: 空き家バンクに登録している空き家の所有者や、購入・賃貸した者。
- 補助内容: 処分費用の1/2、上限10万円。
- 条件: 市税の滞納がないこと、山陽小野田市一般廃棄物収集運搬許可業者に処分を依頼することなど。
補助制度の検索方法
全国の自治体が実施している空き家対策支援制度を検索するには、以下のサイトが便利です
- 地方公共団体による空き家対策支援制度検索サイト:全国の空き家対策の実施施策や事例が検索できます。「地方公共団体による空き家対策支援制度」検索サイト
また、山梨県では、市町村における空き家の家財処分補助制度一覧表を公開しており、各市町村の制度の詳細を確認できます。 町村における空き家対策関連の補助制度一覧表 (PDF)
まとめ
空き家の家財処分費補助制度は、空き家の有効活用を促進し、地域の活性化につながる重要な取り組みです。補助制度の内容や条件は自治体によって異なるため、詳細は各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で確認することをおすすめします。
空き家の家財処分を検討されている方は、これらの補助制度を活用し、負担を軽減しながら空き家の活用を進めてみてはいかがでしょうか。
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