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【知らないと損!】義父を介護した嫁も遺産がもらえる?「特別寄与料」制度とは

「義父の介護を10年もしてきたのに、嫁だから遺産はもらえないなんて…」
そう疑問に思ったことはありませんか?

実は、相続人ではない“長男の嫁”などの親族が介護などで貢献した場合でも、一定の条件で遺産を受け取れる制度があります。
それが、「特別寄与料」制度です。

この記事では、制度の内容、請求の流れ、書類の記入例、実際に裁判所へ提出するWordテンプレートまで、やさしく解説します。

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目次

特別寄与料とは?相続人でない人でも遺産請求できる制度

特別寄与料とは、法定相続人ではない親族(例:長男の妻など)が、被相続人(故人)の介護などで貢献した場合に、相続人に対して金銭を請求できる制度です。

特別寄与料とは(制度の概要)

項目内容
制度名特別寄与料制度(民法第1050条)
対象者相続人以外の親族(例:長男の妻、甥、姪など)
請求先被相続人の相続人(個人ではなく「全体」に対して
内容被相続人の療養看護や介護等に「特別の寄与」があったと認められる場合、金銭請求ができる
裁判所の関与相続人と合意できない場合、家庭裁判所に申立て
申立期限相続開始(死亡)から6か月以内

💬ケース別に考える:妻の立場と可能性

「義父の介護をした妻の遺産相続」に関しては、状況に応じて以下のように分けて考える必要があります。

🔍前提:義父=夫の父(妻にとっての血縁関係なし)

日本の民法では、法定相続人は原則として 血縁関係がある者 と配偶者に限られます。

そのため、義父(夫の父)が亡くなった場合、義理の娘である「妻(長男の嫁など)」は 法定相続人にはなりません

ケース①:介護の貢献が大きかったが、遺言書がない

相続権はなし。
法定相続は、以下の順です(配偶者がすでに他界している場合):

  1. 子(夫やその兄弟姉妹)
  2. 孫(夫の子がすでに他界している場合)
  3. 両親(存命なら)または祖父母
  4. 兄弟姉妹 → 兄弟姉妹の子(甥・姪)

つまり、妻は法定相続人にならないため、何も受け取れないのが原則です。

ケース②:義父が遺言書で「財産の一部を妻に相続させる」と書いていた

有効な遺言があれば相続可能です。

例えば:

  • 「○○に世話になったので、預金のうち500万円を渡す」など明記されていれば有効。
  • ただし、他の法定相続人には遺留分(最低限の取り分)がありますので、すべてを渡すことは難しい場合もあります。

ケース③:生前贈与・遺贈があった

➡ たとえば、介護の感謝として不動産を生前贈与された場合や、死後に「遺贈」(遺言により相続人でない人に財産を与える)として指定された場合は受け取れます。

ケース④:特別寄与料の請求(2019年法改正後)➡ これは注目ポイントです。

特別寄与制度(民法1050条)

  • 2019年7月1日から施行
  • 相続人でない親族が、被相続人に対して「介護や療養看護」などで貢献した場合、相続人に金銭請求できる制度
  • 「長男の妻が義父を10年間介護した」などが典型例

申立先:家庭裁判所

期限:相続開始(死亡)から6か月以内に請求

【実例解説】義父の介護で遺産はもらえる?特別寄与料が認められたリアルな事例3選

今回は実際に制度を利用して認められた事例を3つご紹介。努力が正当に評価されたリアルなケースを知ることで、あなたにもできることが見えてきます。

ケース①:10年間の在宅介護で300万円が認定された妻のケース

被相続人義父(脳梗塞で寝たきり)
請求者長男の妻(同居し介護)
介護内容訪問看護の手配、排泄・食事介助、通院付き添い
期間約11年間
結果家庭裁判所が特別寄与料300万円を認定

ケース②:独身の伯父を支えた姪が150万円を受け取った事例

被相続人独身の伯父(要介護3)
請求者姪(通院同行・看取り)
内容入退院手続き・医療費立替・在宅看取り
結果家庭裁判所調停で和解、150万円を支払い

ケース③:義母を引き取り介護した嫁に250万円(申立は400万円)

被相続人義母(要介護5・認知症)
請求者長男の妻(自宅で8年間介護)
内容介護全般、生活支援、介護保険申請など
結果250万円の特別寄与料が認定

特別寄与料が認められやすいポイント

  • 長期かつ継続的な在宅介護を行っていた
  • 介護記録・費用明細・診療履歴などの証拠がある
  • 金銭的な負担を負っていた(交通費・医療費など)
  • 他の相続人がほぼ関与していなかった

“家族の介護”が正当に評価される時代に

相続の場では「血縁」が重視されがちですが、今は「貢献」が評価される時代です。

特別寄与料制度を使えば、義理の関係であっても介護などの貢献に対して正当な報酬を受け取れる可能性があります

特別寄与料請求書(記入例)【相続人宛て提出用】

特別寄与料請求書

令和○年○月○日

〇〇〇〇(被相続人)の相続人 〇〇〇〇 様
(または相続人代表者)

請求者:〇〇〇〇(長男の妻)
住所:〒000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
電話:000-0000-0000

件名:特別寄与料の請求について

拝啓 貴殿におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

私は、被相続人〇〇〇〇の長男〇〇〇〇の妻として、長年にわたり被相続人の療養看護および日常生活の支援を行ってまいりました。以下のような寄与を行ったことに鑑み、民法第1050条に基づき、相続人の皆様に対し、特別寄与料として金○○○万円の支払いを請求いたします。

寄与内容の概要:

  • 寄与の期間:平成○○年○月~令和○○年○月(約○年○か月)
  • 内容:通院介助、日常生活の世話(食事、排泄、洗濯等)、在宅看護、介護保険サービスの手続き代行など
  • 費用負担:訪問介護費・福祉用具・交通費・雑費等を自己負担

つきましては、誠に勝手ながら、本請求内容についてご検討のうえ、令和○年○月○日までにご回答を賜りたく存じます。ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。

何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具

【署名】
請求者氏名:〇〇〇〇 (自署)

以下のリンクから「特別寄与料請求書」のWordテンプレートをダウンロードできます。

実際の請求時には、氏名・日付・具体的な寄与内容・金額などをご自身の事情に合わせてご記入ください。

まとめ表

項目内容
法定相続権義父に対して「妻」は基本的に相続権なし
遺言書がある場合指定されていれば相続可能(遺贈)
特別寄与料介護などの寄与に対して金銭請求可能(裁判所へ)
生前贈与受け取っていれば有効(他の相続人と調整が必要な場合も)
遺留分他の法定相続人に対する最低限の取り分に注意

結論とアドバイス

「義父の介護をしたから」といって、自動的に遺産を受け取ることはできません。しかし、以下の3つの方法があれば受け取れる可能性があります:

  1. 義父の 遺言書による遺贈
  2. 生前贈与による財産移転
  3. 特別寄与料の請求(相続人に対して)

→ 実際の対応には家庭裁判所への申立や弁護士相談が必要となることが多いため、相続発生後は速やかに専門家に相談されることをおすすめします。

【ポイント】相続人の合意があれば分与できる

遺産分割は基本的に「相続人間で自由に話し合って決める」ことができるため、法定相続人以外への分与も「相続人全員が合意すれば可能」です。

具体的な手順と例

1. 相続人全員が合意

  • 例えば、法定相続人が長男・長女の2人だけだった場合
  • 2人が「義父の介護をしてくれたから、長男の妻にも○○万円渡そう」と合意すればOK

2. 遺産分割協議書にその旨を明記

  • 「○○(相続人でない者)に、○○円を分与する」と書く
  • 相続人全員が署名・押印する

3. 現金・預金の分配に活用

  • 不動産の名義変更は相続人以外には基本的に使えないため、現金や金融資産での分与がスムーズです

【遺産分割協議書の記載例】

遺産分割協議書

被相続人 〇〇〇〇(昭和○年○月○日生、令和○年○月○日死亡)は、令和○年○月○日、〇〇県〇〇市において死亡した。

本協議書は、被相続人の遺産について、以下のとおり協議のうえ、相続人全員が合意した内容を記すものである。

第1条(相続人)

被相続人の相続人は以下のとおりである。

  • 長男 〇〇〇〇(住所:〇〇県〇〇市…)
  • 長女 〇〇〇〇(住所:〇〇県〇〇市…)

第2条(遺産の内容)

被相続人の遺産は以下のとおりである。

  1. 預貯金:〇〇銀行〇〇支店 普通預金口座(口座番号:×××××××)
     残高:金〇〇〇万円
  2. 不動産:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号(地番〇〇〇)
     登記簿記載の土地及び建物

第3条(相続分の分配)

相続人は、上記の遺産について以下のとおり分割することに合意した。

  • 上記預貯金のうち金100万円を、被相続人の介護に尽力した**〇〇〇〇(長男の妻・相続人でない者)**に分与する。
     ※本分与については、贈与税が課される場合があることを確認のうえ合意した。
  • 残額および不動産は、長男〇〇〇〇および長女〇〇〇〇にて以下のとおり相続する。
     …(以下略)

第4条(その他)

  1. 本協議に関して、相続人全員に争いがないことを確認する。
  2. 本協議書は相続人全員が署名押印し、各自1通ずつ保管する。

令和○年○月○日

【相続人】

長男 〇〇〇〇 (署名) 印
長女 〇〇〇〇 (署名) 印

【相続人でないが分与を受ける者】
〇〇〇〇(長男の妻) (署名) 印

以下のリンクから、Word形式の「遺産分割協議書テンプレート」をダウンロードできます。

必要に応じて、内容を編集・加筆してご利用ください。不動産や金銭の記載を正確にする際は、司法書士や税理士への確認もおすすめします。

補足ポイント

項目内容
書式手書き/ワープロどちらでもOK。署名は自筆が望ましい。
押印実印が望ましい(可能なら印鑑証明書も添付)
用紙A4用紙、縦書き・横書き自由
提出先相続登記がある場合は法務局/税務申告が必要な場合は税務署に提出する書類の一部になる

必要に応じて追加すべき書類

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  • 印鑑証明書
  • 財産目録
  • 不動産登記簿謄本(登記変更時)

注意点

義父の介護をした妻は、法定相続人ではないため原則は相続できませんが、相続人全員の合意があれば遺産の一部を受け取ることは可能です。
ただし、贈与税の対象になる場合があるため、税理士など専門家への相談が望ましいです。

項目注意内容
合意の有無相続人の1人でも反対すれば分与できません
贈与税相続人でない人への分与は「贈与」とみなされ、贈与税が課税される可能性があります(年間110万円まで非課税)
書面化の重要性口頭ではなく、必ず遺産分割協議書に明記し、証拠を残すことが大切です

相続人が特別寄与料を認めない場合の対応

相続人が特別寄与料の支払いを認めない場合は、家庭裁判所に申し立てて判断を仰ぐことができます

以下に、対応方法と注意点を詳しく説明します。

▶【1】まずは話し合い(任意交渉)

  • 請求書などを通じて寄与の具体的内容・期間・金額を伝える
  • 医療記録・介護日誌・費用明細などの証拠も提示すると説得力あり
  • それでも合意に至らない場合は…

▶【2】家庭裁判所への申立て

申立先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

申立人:被相続人に特別の寄与をした法定相続人以外の親族
(例:長男の妻、甥、姪など)

提出書類:

  • 特別寄与料審判申立書
  • 戸籍謄本類(申立人と被相続人との関係が分かるもの)
  • 介護記録や医療証明、費用明細等の証拠
  • 被相続人の財産資料(遺産の全体像が分かる資料)

申立期限:相続開始(被相続人の死亡)から6か月以内

家庭裁判所での判断基準

裁判所は以下の点を重視して「寄与の程度」と「金額」を判断します:

審査ポイント内容
寄与の内容介護・療養・金銭的負担・看取りなど
寄与の期間どのくらいの年月、継続的に行われたか
寄与の程度専門職で代替できないほどの深い関与か
相続財産請求する特別寄与料が全体の中で妥当か

「特別寄与料審判申立書」の記入例(家庭裁判所向け正式様式)

以下に、家庭裁判所へ提出するための「特別寄与料審判申立書」の記入例(家庭裁判所向け正式様式)を掲載します。

この記入例は、以下のような状況を想定しています:

  • 申立人:被相続人の長男の妻(法定相続人ではない)
  • 被相続人:義父(申立人と同居)
  • 相続人:長男(申立人の夫)、長女(義姉)
  • 介護期間:約10年
  • 寄与料請求額:300万円

特別寄与料審判申立書

令和○年○月○日

〇〇家庭裁判所 御中

申立人(特別寄与者)

氏名:山田 花子
生年月日:昭和50年4月5日
住所:〒123-4567 東京都練馬区〇〇〇1-2-3
電話番号:03-1234-5678

被相続人

氏名:山田 太郎(申立人の義父)
生年月日:昭和20年5月3日
死亡日:令和6年3月10日
死亡時の本籍及び住所:東京都練馬区〇〇〇1-2-3

相手方(法定相続人)

  1. 山田 一郎(長男) 東京都練馬区〇〇〇1-2-3
  2. 佐藤 美咲(長女) 千葉県船橋市×××2-3-4

申立ての趣旨

申立人は、被相続人 山田太郎 に対して特別の寄与を行った者であるため、相手方に対し、特別寄与料として金300万円の支払いを求める。

申立ての理由

申立人は、被相続人の長男である山田一郎の配偶者(いわゆる長男の嫁)として、平成26年から令和6年までの約10年間、被相続人と同居し、下記のとおり介護・生活支援等を行ってきました。

  • 通院付き添い(週3回)、入退院の手続きと看病
  • 排泄・食事・着替え等の介助
  • 要介護5となって以降は、24時間の見守りと在宅看護を実施
  • 訪問介護・訪問診療の手配、介護保険手続き等も実施
  • 介護にかかった交通費、紙おむつ・医療品費等を自己負担(約120万円相当)

これらの行為は、通常の親族的扶助の範囲を超えるものであり、民法第1050条に基づく「特別の寄与」に該当するものと考えられます。

被相続人の遺産の規模(預金・不動産合計:約3000万円)に対しても妥当な範囲の寄与料と考え、相続人に対して金300万円の支払いを求め、家庭裁判所に審判を申し立てるものです。

添付書類

  1. 被相続人の戸籍(出生~死亡)
  2. 申立人の戸籍謄本
  3. 相続人全員の戸籍
  4. 被相続人の財産目録(通帳写し・不動産登記簿など)
  5. 介護記録・費用明細・医療証明など

署名:山田 花子 印

以下のリンクから「特別寄与料審判申立書(記入例)」のWordテンプレートをダウンロードできます。

家庭裁判所に提出する際には、内容をご自身のケースに合わせて修正し、添付書類の準備もお忘れなく。

▶ 家庭裁判所への申立て(6か月以内)

項目内容
申立先被相続人の住所地の家庭裁判所
申立人介護等で特別の寄与をした親族
必要書類申立書、戸籍、介護記録、財産資料など
判断基準寄与の内容・年数・遺産規模とのバランス

提出前にチェックすべきポイント

  • 相続開始から6か月以内か?
  • 介護記録や金銭負担の証拠が残っているか?
  • 遺産の全体額とバランスがとれた請求金額か?
項目内容
書式手書きでもワープロでも可(家庭裁判所に提出時は印鑑が必要)
添付書類介護の事実を示す証拠(介護保険証、領収書、記録など)が重要
申立先被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
期限相続開始(死亡日)から6か月以内に申立てが必要

まとめ

質問回答
相続人が拒否したらどうする?家庭裁判所に申立てが可能
どのくらいの期間で?相続開始から6か月以内に申立てる必要あり
裁判所では何を見られる?介護の内容・期間・費用・寄与の程度など
必要な書類は?戸籍・介護記録・財産資料・申立書など

書類の作成や相続人との交渉に不安がある方は、司法書士・弁護士・税理士などの専門家への相談もおすすめです。

まとめ:嫁でも“相続的評価”される時代へ

血縁がなくても、介護・看護といった「見えない貢献」は、特別寄与料という形で法的に評価される時代になりました。

「介護してきたけど、何ももらえない…」と感じている方も、ぜひこの制度を検討してみてください。

特別寄与料は法的な争いに発展することもあります。
必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家に相談しましょう。

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