こんにちは、当ブログでは実際に親の相続を経験した筆者が、体験を元に相続・遺品整理のリアルな疑問をわかりやすく解説しています。
今回は「相続人が複数いる場合に、自分だけが相続放棄したらどうなるの?」というテーマを取り上げます。
「自分は財産がいらないから放棄したい」
「借金を背負いたくないけど、兄弟は相続するつもりらしい」
そんな状況では、放棄の影響が周囲にどう波及するかを正しく知ることがとても重要です。
相続放棄とは?基本の確認

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産や借金など一切の権利義務を引き継がないという意思表示を、家庭裁判所に申述することで成立する法的な手続きです。
- 申述期限:死亡を知った日から3か月以内(熟慮期間)
- 提出先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 誰が対象?:配偶者・子・親・兄弟姉妹などの法定相続人
相続人が複数いる場合の放棄の影響とは?
自分だけ放棄した場合
自分だけが相続放棄をした場合、「最初から相続人でなかったもの」とみなされます。
その結果、他の相続人がその分を多く相続することになります。
例:相続人が3人いる場合
相続人 | 放棄前の相続分 | Aさんが放棄後の相続分 |
---|---|---|
A(放棄) | 1/3 | 0 |
B | 1/3 | 1/2 |
C | 1/3 | 1/2 |
放棄したAさんの相続分が消え、BさんとCさんで均等に再分配されます。
全員が放棄した場合
相続人全員が放棄した場合、次の順位の相続人に権利が移ります。
- 第1順位(子)が放棄 → 第2順位(親)へ
- 第2順位も放棄 → 第3順位(兄弟姉妹)へ
それでも全員が放棄すれば、「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続財産管理人(そうぞくざいさんかんりにん)とは、相続人がいない、または相続人全員が相続放棄をした場合などに、家庭裁判所の選任によって、亡くなった人の財産を管理・処分する人のことです。
🔍 相続財産管理人とは?
定義:相続財産管理人とは、相続人がいない、または相続人が相続を放棄したときに、残された財産を適正に管理・清算するために家庭裁判所が選任する人物(弁護士など)です。
🏛️ 主な役割
項目 | 内容 |
---|---|
相続財産の調査 | 不動産・預貯金・負債などの全体を把握 |
債権者への弁済 | 借金や未払い金の支払い(優先順位あり) |
財産の換価 | 不動産などを売却して現金化する |
残余財産の処分 | 国庫への帰属手続きなど(※相続人がいない場合) |
利害関係人への対応 | 債権者や受遺者、寄与者への通知や手続き |
📌 選任されるケース
以下のような場合に、家庭裁判所に申立てをして選任されます。
- 相続人が誰もいない(無相続)
- 相続人全員が相続放棄をした
- 相続人が遠方で財産を放置している
- 遺言執行者がいないまま、整理が必要な場合
💼 誰が選ばれるのか?
通常は、弁護士や司法書士など、法律の専門家が家庭裁判所により選任されます。
💰 費用(予納金)
選任の際、申立人は「予納金」として数十万円〜100万円程度の金銭を家庭裁判所に納める必要があります。
(財産の規模・内容により異なります)
📝 選任の申立て方法
手続きの流れ | 内容 |
---|---|
① 申立て | 利害関係人(債権者、知人、葬儀社など)が家庭裁判所に申立て |
② 書類提出 | 死亡の戸籍、財産目録、申立書など |
③ 裁判所の審査 | 相続人の有無を調査・公告 |
④ 選任 | 相続財産管理人が選ばれる |
⑤ 業務開始 | 財産の清算・換価・分配処理など |
🧾 関連する制度や用語
- 特別縁故者:相続人がいない場合、親族や生前に特別に親しかった人が財産の一部を受け取れる制度(要申立て)
- 国庫帰属:最終的に誰も財産を引き取らないと、国のものになります
まとめ
項目 | 要点 |
---|---|
選任の目的 | 相続財産の保全と清算 |
誰が申立てできる? | 債権者・市町村・特別縁故者など |
管理人の業務 | 財産調査・弁済・換価・分配・報告 |
財産が余れば? | 特別縁故者へ分与 or 国庫へ帰属 |
誰かが放棄しない場合の注意点
一部の相続人が放棄しても、他の相続人が放棄しなければその人に借金も含めて相続権が集中することがあります。
特に、プラスの財産よりマイナスの財産(借金)が多いケースでは、事前の家族間協議が大切です。

相続放棄の手続きと注意点
家庭裁判所への提出書類
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 申述人(あなた)の戸籍謄本
- 収入印紙800円分
- 郵便切手(各裁判所指定)
※相続人が複数いても、申述はそれぞれ個別に行う必要があります。連名は不可。

放棄したことを他の相続人に伝える義務は?
法律上は義務はありませんが、相続が回ってくる可能性のある人(次順位の相続人)に早めに伝えるのが望ましいです。
知らずに財産に手を付けてしまうと、放棄できなくなる危険があります。
💬 実際によくあるトラブル例
- 「兄が放棄したから私が全部相続することに…借金も含めて来た」
- 「叔母が放棄したことを知らず、遺品を整理してしまい放棄できなかった」
- 「全員が放棄していたため、債権者から相続財産管理人の選任を求められた」

まとめ:家族で話し合い+専門家への相談を
相続放棄は個別の判断ですが、他の相続人に大きな影響を及ぼす可能性があります。
- 家族で事前に話し合うこと
- 状況に応じて司法書士・弁護士に相談すること
- 放棄後の相続人の変動を確認すること
相続は「自分の問題」だけでなく「家族全体の問題」です。正しい知識と冷静な判断で、後悔しない選択をしていきましょう。
コメント